税理士が解説する わかりやすい相続税と贈与税
知ってトクする!生前贈与のしくみと活用法まるわかり

知ってトクする!生前贈与のしくみと活用法まるわかり

■ 生前贈与ってなに?

生前贈与」とは、生きているうちに自分の財産を子や孫などに贈ることです。

相続が発生したとき、相続税がかかることがありますが、早めに贈与を行えば、相続財産を減らし、相続税対策につながります。
また、住宅購入や教育費など、人生の節目で支援できるのも大きなメリットです。

■ 毎年使える!「基礎控除」110万円

生前贈与の基本となるのが、毎年110万円まで非課税で贈与できる基礎控除です。

【ポイント】
  • 贈与税がかからない金額:年間110万円まで
  • 贈与を受けた回数や人数に関わらず、合計額に対して差し引かれる
    たとえば、母から200万円、父から100万円=合計300万円 → 300万-110万=190万円に対して課税
  • 贈与契約書を作成し、名義・通帳をしっかり分けておくのが安心
📌 コツコツ続ければ大きな節税につながります。

■ 大きな額を一気に渡したいなら
  相続時精算課税制度(2,500万円まで)

「マイホームの頭金を出してあげたい」「土地や建物を生前に名義変更しておきたい」
そんなときに使えるのが、相続時精算課税制度です。

項目内容
贈与できる人60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ
非課税枠最大2,500万円まで贈与税がかからない
超えた分一律20%の贈与税
相続時贈与された財産を相続財産に加えて相続税を計算(=精算)
一度選ぶとその贈与者については以後、相続時精算課税が適用され続ける

 2024年改正でさらに便利に!

相続時精算課税制度でも110万円の基礎控除が可能に。

これまで、「相続時精算課税を選ぶと、110万円の基礎控除は使えない」という制限がありましたが、
2024年(令和6年)の税制改正で、相続時精算課税制度に基礎控除(110万円)が創設されました!

【たとえば…】
父から相続時精算課税制度を選択した子が、年間150万円の贈与を受けた場合:
  • 110万円 → 基礎控除で非課税(暦年贈与とは異なり、相続開始前7年以内の持ち戻し対象外で相続財産にも加算されません)
  • 残り40万円 → 相続時精算課税の枠内でカウント(贈与税なし)
📌 上記は年間150万円なので申告必要ですが、年間110万円以下の少額贈与なら申告も不要になり、非常に使いやすくなっています

✅ 現金だけじゃない!「モノ(資産)」も贈与できる

相続時精算課税制度で贈与できるのは、現金や預金だけではありません。
土地・建物・株式などの「財産(資産)」も対象です。

たとえば:
・自宅の土地を子どもに贈与する
・賃貸アパートを生前に名義変更する
・株式や有価証券を贈与する
といった形でも利用できます。

【ポイント】
  • 贈与時には時価(評価額)で贈与税が計算されます
  • 登録免許税や不動産取得税などの別途費用もかかる場合あり
  • 固定資産税などの維持・管理コストも含めて検討を
📌 特に不動産の贈与は税額や登記などが複雑になりやすいので、事前にご相談下さい。

相続時精算課税制度 × 不動産の活用イメージ

ケース使い方
二世帯住宅の土地を子に贈与将来の相続トラブル回避や土地活用に有利
アパートを子に贈与家賃収入を子に移転でき、所得分散による節税効果も
自宅を生前に贈与早めに名義を整理しておきたいときに有効

このように、相続時精算課税制度は「まとまった金額の現金贈与」に限らず、価値のある“資産そのもの”を早めに移転したい場合にも非常に便利です。
以下の特例との併用も可能です!

■ 教育資金・住宅取得資金の贈与には“特例”もあります!

教育資金贈与の特例(一括贈与)

内容詳細
対象30歳未満の子や孫
非課税枠最大1,500万円(塾・習い事は500万円まで)
対象費用入学金・授業料・教材費・塾・習い事など
必要手続き銀行で専用口座を開設し、領収書を提出して管理
相続加算口座残額は相続財産に加算。孫へは2割加算適用

📅 適用期限:2026年3月31日までに契約が必要

住宅取得等資金贈与の特例

内容詳細
対象父母や祖父母から、住宅購入・新築・増改築の資金贈与を受けた場合
非課税枠最大1,000万円(省エネ住宅)、それ以外は最大500万円
条件2026年12月31日までの契約、一定の住宅性能、翌年3月15日までに入居など
他、細かな要件あり
注意点贈与税申告が必要(非課税でも)

📅 適用期限:2026年12月31日までに契約が必要

👉 子や孫が家を買うタイミングでの援助にピッタリです。

■ まとめ:制度を正しく知って、損しない生前贈与を!

制度名非課税枠対象ポイント
暦年課税年110万円誰でも毎年使える、手軽な制度
相続時精算課税2,500万円(+年110万円)親・祖父母 → 子・孫相続時に合算、2024年から110万円控除あり!
教育資金贈与最大1,500万円30歳未満の子・孫2026年3月まで。一括贈与で教育支援が可能
住宅取得資金贈与最大1,000万円子・孫2026年12月まで。家の購入支援におすすめ

制度を組み合わせて上手に使えば、
家族への想いをカタチにしながら、相続税対策にもつながります。

■ 最後に:早めの準備がカギです!

制度には期限や条件があり、将来変更される可能性もあります。
生前贈与を考えているなら、早めに計画を立てることが重要です。

「ただ財産を渡す」のではなく、
家族の暮らしを支える“意味ある贈与”を目指しましょう。