税理士が解説する わかりやすい相続税と贈与税

えっ、NISAも相続するの!?積立NISAを相続したときに気をつけたい3つのこと

「積立NISAって、相続するとどうなるの?」


最近よく聞かれるご質問です。


「父がやってた積立NISA、どうしたらいいの?」

「母のNISAはそのまま引き継げるの?」


実は、積立NISAは相続のときに“特別ルール”があります。


このコラムでは、「積立NISAを相続したときの落とし穴」について、できるだけわかりやすく解説します。

1NISAは「そのまま引き継ぐ」はNG

まず大前提ですが、NISAは「本人だけの制度」のため、相続が発生した時点で被相続人のNISA制度は使えなくなってしまいます。

つまり、「親の積立NISAをそのまま引き継いで、続けよう!」

…ということは、できないのです。

 

【ポイント】

・積立NISAは、亡くなったら「そこで終わり」

・投資していた商品は「相続財産」として扱われる

・時価評価して、相続税の対象になる


【参考】

金融庁「NISAの概要」

https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html

2】「含み益」も相続の対象になる?

「え、まだ売ってないのに相続の対象になるの?なんで!?」

たとえ売っていなくても、相続時は「時価」で評価するので、値上がり分も相続財産に含まれます。

 

元金(積み立てた額)→500万円

相続時の元金+評価額→900万円

 

この場合、相続税の対象は900万円になります。

「積立していただけなのに…」と驚かれる方も多いポイントです。

ただし、相続した後に売却するときは、相続時の時価が“新しい取得価額”になります。

上記の例だと900万円以上で売却した場合、新たな取得価額900万円との差額が課税対象になります。

 

【参考】

国税庁「財産を相続したときの取得費」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.html

3】手続きしないと「自動的に課税口座」に!

積立NISAは、口座の名義人が亡くなったことを証券会社に届け出るとその口座は凍結されてしまいます。

戸籍謄本等の書類で相続人を確認し、遺産分割協議書に基づいて誰がどの割合で相続するかを把握し、相続人の名義で新たに積立NISA口座を開設するか、既存の口座へ資産を移管します。

ただし、上記でも解説したように積立NISAは本人だけの制度で口座名義人の変更ができないため、実際は相続人の課税口座へ移管されることになります。

 

そのまま放置しておくと、知らないうちに売却益や配当に「20.315%の税金」がかかることも…遺産分割協議書がない場合は法定相続分で処理されることが多いためです。

 

「非課税のつもりでいたら、しっかり税金引かれてた!」なんてことにならないよう、相続の手続きは早めにとりかかりましょう!

【事例3つでイメージしよう】

「知らずに放置していたら、いつの間にか課税口座に」

父が亡くなったとき、Aさん(50代)は積立NISAのことを知らずに放置していました。

半年後に証券会社から「課税口座に移管しました」と突然の通知が…。

→売却時にはしっかり税金がかかってしまいました。


「評価額が想像以上だった!」

Bさん(60代女性)は、夫が積み立てていたNISAを調べたところ、

600万円の元本が、いつの間にか1200万円に!」

その時価が相続税の対象になるため、想像以上の税額に驚いてしまいました。


NISAは贈与できないって本当?」

「積立NISAを子供に譲りたい」と考えていたCさん(55歳男性)。

でも、NISAは名義人本人だけの制度であり、途中で他人に譲ることはできません。

生前贈与したい場合は、「暦年贈与で計画的に現金を贈与して、子どもが自分名義でNISAを始める」のがベターです。


【まとめ】

積立NISAは「積み立てた元金+評価益をそのまま相続できる」と思いがちですが、実は細かいルールがあります。


ご家族が積立NISAをやっている場合、 「どこの証券会社で口座を作っているか」 「どの銘柄をいくらくらい積み立てているか」 事前に確認しておくのが安心です。


相続や生前贈与については、税務のプロに相談するのが一番の近道です!

気になることがあれば、ぜひお早めにご相談ください!